2025年、ロレックスは時計業界に大きな衝撃を与える新作を発表しました。「オイスター パーペチュアル ランドドゥエラー 40」です。この時計は、単なる新モデルの枠を超え、ロレックスの歴史の新たな章を開く記念すべき作品として注目を集めています。
今回は、この革新的なタイムピースについて、技術的な革新から歴史的背景、デザインの特徴まで、あらゆる角度から詳しく解説していきます。
概要:50年の時を経て蘇った伝説のシルエット

ランドドゥエラー 40は、1975年に登場したRef.1530のケースデザインを現代的にアップデートしたモデルです。このデザインは後に「オイスタークォーツ」として親しまれることになりますが、実は機械式時計として最初に登場したのがRef.1530でした。

主要スペック
- ケースサイズ: 40mm(36mmモデルも用意)
- ケース厚: 9.7mm(従来のデイトジャスト41より2.3mm薄型)
- 防水性能: 100m
- ムーブメント: Cal.7135(ロレックス初の5Hz高振動ムーブメント)
- パワーリザーブ: 約66時間
- 定価: 2,255,000円〜(スティール×ホワイトゴールドモデル)
革命的技術:ダイナパルス エスケープメントの衝撃

10年間の研究開発の結晶
ランドドゥエラー最大の特徴は、搭載される革新的なダイナパルス エスケープメントです。この脱進機の開発には約10年の歳月が費やされ、32件の特許出願および特許が関連している技術の結晶です。
ダイレクトインパルス方式とは?
従来の機械式時計では「レバー脱進機」が主流でした。しかし、この方式には構造上避けられない摩擦があり、定期的な潤滑(オーバーホール)が必要でした。
ダイナパルス エスケープメントは「ダイレクトインパルス方式」を採用し、以下の革新的な特徴を持っています:
- 摩擦の大幅削減: ガンギ車からテンプへ直接エネルギーが伝達される
- オーバーホール間隔の延長: 潤滑の必要性が大幅に減る
- 高精度の実現: より安定した歩度を長期間維持
- エネルギー効率の向上: 66時間のパワーリザーブを実現
シリコン技術の全面採用
この脱進機では、ガンギ車と可動式ロック機構の両方にシリコン素材を全面的に採用しています。シリコンの特徴:
- 自己潤滑性: オイル不要
- 耐磁性: 磁気の影響を受けない
- 耐熱性: 温度変化に強い
- 軽量性: 部品の慣性を最小化
- 耐衝撃性: 従来の弱点を克服
5Hz高振動ムーブメント:Cal.7135の技術的優位性

ロレックス初の高振動ムーブメント
Cal.7135は、ロレックス初となる機械式の高振動ムーブメントです。36,000振動/時(5Hz)で動作し、従来の28,800振動/時(4Hz)を大きく上回ります。
高振動化のメリット
- 精度の向上: より細かい時間制御が可能
- 外部衝撃への耐性: 振動の慣性により安定性向上
- 歩度の安定: 長期間にわたって高精度を維持
他社との技術比較
現在、5Hz以上の高振動ムーブメントを量産レベルで製造できるブランドは限られています。ロレックスがこの技術を実用化したことで、機械式時計の新たな可能性が開かれました。
デザインの特徴:伝統と革新の絶妙なバランス

出典: Rolex 公式

出典: Rolex 公式
一体型ブレスレットの復活
フラットジュビリーブレスレットは、このモデルのために特別に開発されました。従来のジュビリーブレスレットとの違い:
- フラットな仕上げ: 鏡面仕上げの面積を削減
- 一体型設計: ケースと滑らかに一体化
- 隠しクラスプ: 王冠型の引き手を特徴とする「クラウンクラスプ」採用
- セラミックインサート: ブレスレットのリンク内部に特許取得のセラミック部品を配置
文字盤のハニカムモチーフ
文字盤には新たなハニカムモチーフの装飾が施されています。この六角形パターンは:
- 光の反射: 角度により異なる表情を見せる
- 立体感: 文字盤に深みと質感をプラス
- 視認性: 時刻表示の読み取りやすさを向上
フルーテッドベゼル
18Kホワイトゴールド製のフルーテッドベゼルは、ロレックスの伝統的なデザイン要素です。機能面では:
- グリップ性: 回転操作時の滑り止め効果
- 装飾性: 光の反射による美しい輝き
- ブランドアイデンティティ: ロレックスらしさの象徴
バリエーション展開:多彩な選択肢
ケースサイズ
- 40mm: メインサイズ、現代的な存在感
- 36mm: クラシックサイズ、より控えめな印象
素材バリエーション
- オイスタースチール×ホワイトゴールド
- 定価: 2,255,000円
- 最もベーシックなモデル
- 18Kエバーローズゴールド
- バゲットダイヤ有無を選択可能
- 定価: 9,427,000円〜
- プラチナ
- 最高級モデル
- バゲットダイヤ仕様も用意
歴史的意義:なぜ今このデザインなのか
オイスタークォーツとの関連性
1970年代、クォーツ技術の台頭により機械式時計は大きな危機を迎えました。ロレックスもこの流れに対応し、Ref.5100「テキサノ」を発表。このモデルのケース形状が、現在のランドドゥエラーの原型となっています。
技術革新の象徴
クォーツ技術が時計業界を変革したように、今回のダイナパルス エスケープメントも機械式時計の新たな地平を切り開く技術です。同じケース形状を採用することで、ロレックスは技術革新の歴史的継続性を表現しています。
市場での位置づけと価格動向
希少性と投資価値
2025年の発表以来、ランドドゥエラーの市場価格は急激に高騰しています。Chrono24では定価の約6倍に届く価格で出品されており、長期的な価格上昇が見込まれています。
入手困難性
- 正規店での購入: 極めて困難、長期の待機リスト
- 二次市場: 高額なプレミアム価格
- 流通量: 発表から数ヶ月でも極めて少ない
競合他社との比較
同価格帯での選択肢
ランドドゥエラーと同価格帯では以下のような選択肢があります:
- パテックフィリップ アクアノート
- より高い資産価値
- 入手はさらに困難
- オーデマピゲ ロイヤルオーク
- アイコニックなデザイン
- 異なる技術アプローチ
- ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ
- 伝統的な高級時計製造
- より控えめな存在感
技術的優位性
ダイナパルス エスケープメントの採用により、ランドドゥエラーは技術面で他の追随を許さない独自性を獲得しています。
購入を検討する際のポイント
メリット
- 技術的革新性: 業界をリードする新技術
- 希少性: 限定的な生産量
- 資産価値: 将来的な価格上昇の可能性
- ブランド力: ロレックスの圧倒的な知名度
注意点
- 高額な初期投資: 200万円以上の価格
- 入手困難: 正規購入は極めて困難
- 新技術のリスク: 長期的な信頼性は未知数
- サイズ感: 一体型ブレスレットは調整に制限
まとめ:時計業界の新たな章の始まり
ロレックス ランドドゥエラー 40は、単なる新作時計を超えた意義を持つ作品です。ダイナパルス エスケープメントの採用により、機械式時計の可能性を大幅に拡張し、クォーツ以来最も大きな技術的飛躍を実現しました。
50年前のオイスタークォーツデザインを現代的に解釈したケースと一体型ブレスレットは、伝統と革新の完璧な調和を表現しています。技術的な革新性、希少性、そしてロレックスというブランド力を考慮すれば、このモデルが時計愛好家や投資家から高い注目を集めるのは必然と言えるでしょう。
ただし、高額な価格と入手困難性を考慮すると、購入は慎重に検討する必要があります。新技術の長期的な信頼性についても、今後の実績を見守る必要があるでしょう。
それでも、ランドドゥエラー 40は間違いなく2025年最大の話題作であり、機械式時計の新たな可能性を示した歴史的なモデルとして、長く記憶されることになるでしょう。
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